長谷川明弘
臨床心理学の歴史–催眠を基軸として-
2015,東洋英和女学院大学心理相談室紀要18巻, p56-66
2015年3月31日
▶本論は、催眠を基軸として起源から現代までの臨床心理学の歴史を振り返った。構成は大きく3部に分けた。第1部は、原始治療から精神分析的心理学までである。第2部は、ドイツでの心理学の成立からアメリカでの臨床心理学の創始期、そして行動科学との関連に注目している。第3部は、日本における心理学に関する専門職の国家資格の歴史について述べる。
▶本論では、催眠を基軸として心理学や臨床心理学の歴史を振り返る中で、臨床心理学が実践だけでなく科学に重きをおいて、社会の情勢に気を配りつつ、社会の中で認められて展開してきた点を強調できた。また臨床心理学は、心理学者の専門活動が社会に対する説明責任を問われるようになった時代背景から発展してきたことが読み取れた。
▶催眠は、臨床心理学の中の心理療法だけでなく、心理学が哲学から独立し科学の条件を満たしていく上で、大きな存在を有してきたことが示された。
▶心理学や臨床心理学の専門家は催眠法について正しい知識と技能の習得が望ましい。催眠法を習得することにより、この領域の新たな研究の展開や臨床実践が可能となることが見込まれる。
▶本論では紹介しきれなかったが米国や英国など主要な国々では心理学の専門職が国家資格として位置づけられている。
日本では、50年以上にわたって国家資格化が望まれている状況である。この歴史に書き加える事態の到来を期待したい。
▶キーワード:臨床心理学(Clinical psychology)、歴史(history) 催眠(hypnosis)