町田小織・酒井郷平・長谷川明弘
初年次必修科目「キャリア設計Ⅰ」のプログラム評価と潜在的要望の可視化への試み-質問紙調査のクラスタ分析とテキストマイニングを通して-,
2019,東洋英和女学院大学 人文・社会科学論集第36号(2018年度),pp.53-74.
2019年3月31日
▶本論は、東洋英和女学院大学で実践しているキャリア教育科目に対する受講者の声を拾い、そこから今後のあるべき方向性を模索することを取り上げた。
▶すべては学生のためにあるのだから、答えは学生の中にある。しかし、学生自身がneedsやwantsを把握していない場合もあり、それらは必ずしも顕在化しているわけではない。受講者が回答した質問紙調査結果から導き出された分析・考察をもとに、その潜在的な学生の要望や思いを掘り起こし、可視化することが本稿の目的である。
▶2010年度より開講され、2018年度まで9年間継続した「キャリア設計」という科目がもたらした成果は、まず学生の縦の繋がりを構築したことである。卒業生による講演会を開催したこと、そしてその効果をもとに、2015年度より上級生による講演会を設けたことが受講者に与えた影響は大きい。
▶「上級生講演会」に登壇した3年生は、「1年生の時に上級生講演会を聴き、自分もあそこに立てるような人になろうと思った」と語っていた。自分もああなりたい、なれるかもしれないと思えるような「憧れ」の存在やロールモデルが、大学内にいることは重要である。上級生講演会を加えたことは授業改善の成功例のひとつといえよう。
▶最後に、今後の展望について。本稿では分析・考察の対象から除外したが、本科目におけるペアワーク、グループワークも受講者からの評価は高い。受講者が、講演を聴くという講義型の授業ばかりを好むわけではないことを補記しておく。
▶学生主体の参加型授業の研究については更に研究を進め、別の機会に譲りたい。
▶キーワード:キャリア教育、授業評価、クラスタ分析、テキストマイニング、共起ネットワーク