最新の「生きがい」ならびに「ikigai」研究の動向


長谷川明弘 

最新の「生きがい」ならびに「ikigai」研究の動向~今後の生きがい研究は原点回帰が見込まれる~
2020年5月29日WEB公開
公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット 「健康長寿と生きがい」

 

「生きがい」については、2014年までの高齢者に関する「生きがい」研究の動向を取り上げた総説が報告されていた。
2010年代半ばから海外で生きがいが注目されているようなので裏付けとなるデータを踏まえて、本論では2020年2月時点での生きがい研究の動向と到達点、そして今後の展望を示した。高度経済成長の過程で物質的な豊かさ注目するよりも、心や精神面の豊かさに注目が集まる中で「生きがい」と関連づけて、女性の社会進出を取り上げたり、哲学や家庭教育、文学との関連した研究が行われたりしていた。1966年に出版された神谷美恵子による「生きがいについて」を契機として生きがいを取り上げる研究が増えた。また高齢者だけでなく、青年期や子ども、勤労者といった成人と幅広い世代を取り上げていた。
2000年頃までに高齢化社会を見据えて高齢者を対象とした研究が目立つようになり、生きがいと類似の概念とされる「人生満足度」「モラール尺度」や「主観的幸福感」といった海外の類似した概念に注目した研究が行われていた。21世紀となっても生きがい研究の対象に高齢者が多く取り上げられていた。
今後の生きがい研究の展開は、高齢者だけでなく、全世代を調査対象とした様々な事柄(スポーツ、仕事、障害、哲学、生き方、自己探索など)を対象として取り上げることができる研究テーマになってくると考えられた。
「生きがい」=「ikigai」が世界で適確に通じる言葉になることを期待したい。