統合的な立場からみたブリーフセラピーによる学生相談の実践


長谷川明弘 (2012) 

統合的な立場からみたブリーフセラピーによる学生相談の実践,

Hearty(金沢工業大学心理科学研究所年報・金沢工業大学臨床心理センター報), 第8号,pp:11-16:金沢工業大学臨床心理センター

2012年3月31日

 

▶概要: 本論では、統合的な立場からみたブリーフセラピーに基づいて学生相談において実践したその特徴を示し、他のアプローチ・モデルとの対比について整理を試みた。 筆者の実践における特徴として、システムにおける要素間の関係性を考慮する場合は、従来の定義に基づいたブリーフセラピーを適用したり、個人の内面に焦点を当てる場合は、催眠法を適用したり、「こころ」と「からだ」の相互作用を想定した場合は、臨床動作法を適用したりする。 シンポジウムの中で対人関係精神分析と認知行動療法と総合的な立場からみたブリーフセラピーとの対比を示した。質問することがブリーフセラピーの特徴と指摘された。これは、各要素を集めて全体像を構築していこうとする姿勢が訓練の中で養われたからであると考えられる。各要素を集めて全体像を構築する面接方策は、「ボトムアップ型の面接方略」と呼ぶことができよう。 認知行動療法では、主訴から導き出された問題の規定を明確に行って面接を進めていく「トップダウン型の面接方略」をとると指摘できる。 対人関係精神分析とブリーフセラピーの歴史的背景から関係性に注目する点では類似していると言えよう。 統合的な立場によるブリーフセラピーでは、理論モデルを問わないで、行動(行為)の変化をした理由づけはいくらでも構成できるという立場をとる。しかし、手続きの記述が重要で、何を観て、どのような考えや認識の基で、どのような応答を行ったのかを丁寧に記録することが大切になろう。つまり、統合的な立場によるブリーフセラピーでは研究活動よりも実践活動を優先しすぎる傾向が強いので、それ故にデータ(丁寧な記述)に基づいた実証研究を推進することが求められる。プロセス研究を適用した研究実績が増えることが重要と考えられる。 統合的な立場によるブリーフセラピーからみた学生相談での実践については、まだ充分に整理や議論が出来ているとはいえないもののその土台を本論にて示すことが出来た。今後も継続して検討ならびに整理を進めていきたい。

 

▶キーワード:統合的な立場、ブリーフセラピー、要素と要素の組合せ、ボトムアップ型の面接方略、関係性

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