日本心理臨床学会第37回大会
【自主シンポジウム】セラピストのリソースを活かす-セラピストの趣味・嗜好がどの様にセラピーに活用されるのか-
日時:平成30(2018)年8月30日(木)13:00~15:00
場所:神戸国際会議場 4 階 401 会議室(定員124名)
日本心理臨床学会第37回秋季大会発表論文集,p.448.
企画者/司会者/指定討論者:長谷川明弘(東洋英和女学院大学)
話題提供者:相模健人(愛媛大学),木場律志(神戸松蔭女子学院大学),法澤直子(長崎純心大学地域連携センター),久持 修(やまき心理臨床オフィス)
指定討論者:田中 ひな子(原宿カウンセリングセンター)
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企画主旨:ブリーフサイコセラピーでは、クライエントが持っているリソースをセラピーに活用することに注目してきた(例えば、解決志向アプローチなど)。リソースを活かすことによって、クライエントの個性と主体性を尊重しながらセラピーを進め、解決に向けた変化を効率的にもたらすことが可能となる。一方で、セラピストが自らの持ち味(リソース)を持ち込んでセラピーが展開しているものと考えられるがあまり注目されてこなかった。面接室に持ち込まれた事象をリソースとして活用・利用する(utilization)という発想は、ミルトン・エリクソンにまで遡る。エリクソンは、自身が青年時代に患ったポリオの経験や子どもをはじめ身近な家族のこと、時にはこれまでに出会った難題を克服した人たちの経験について自らの体験を加味して面接場面でクライエントや研修生に語り、面接の進展や研修生の学びを深めることに用いた。
本シンポジウムでは、セラピストの持ち味として趣味や嗜好を取り上げる。セラピストがセラピー業務以外に打ち込んでいる事柄(趣味や嗜好)はそれに没頭している時点でその人らしさが入り込んでおり、セラピーにもその人らしさがにじみ出てくると考えられる。 シンポジウムでは、セラピストが自らのことを語り、それとセラピーとの関係に何か関連があるのかを掘り下げる形で議論を深めたい。
話題提供の、相模からはクラブ・ミュージックにおけるサンプリングとループを活用したセラピー場面の認識の変化について、木場からはスキューバダイビングとブリーフサイコセラピーの接点について、法澤からはスポーツジムでのエクササイズの上達と臨床技法の上達の同異について、久持からはコーヒー焙煎を通した素材の活かし方について、それぞれ臨床場面との関連で話してもらう。
指定討論の、田中と長谷川は話題提供を受けてセラピストの持ち味と臨床場面での活用に関して、同型性や類似性、異同性などといった観点からコメントを行う。
このシンポジウムを契機としてセラピストが面接場面での影響を有していることを踏まえつつ、それをどの様に活かしながら臨床実践を行っているのか自由な討論を行い、ブリーフサイコセラピーの実践を更に積み上げて発展していくことができるようになることを願っている。
指定討論概要:臨床場面で求められる姿勢と話題提供者が楽しむ趣味・嗜好に向かう姿勢の中の共通点を見いだし、フロー体験とヘドニアとユーダイモニアという観点と合わせて指摘し、説明を行った。
指定討論:長谷川明弘(東洋英和女学院大学)